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ボローニャ歌劇場来日公演 [清教徒]   

やっぱり生の舞台はいい!
大感激するときもあれば、え~~とブツクサ言いたくなる時もあるけれど、それをすべてひっくるめて生に勝るものはなし。
実際に観て聴くからこそ感じることができる、感性が甦る至福の時なのです。

来日公演は高額だから・・といいつつ、今年一番楽しみにしていた清教徒。
が、しかし!!!海水をのみこんでノドに炎症を起こしたとかなんとか、もう笑うしかないような理由で看板テノールにキャンセルされてしまう悪夢。と、少し前のエントリーで書いたとおりですが、正直とてもガッカリ。いくらオペラにキャンセルはつきもの、とわかっていてもがっかりには変わりありません。
とはいえ、いくらガックリしても来ないものは来ないので、タイプは違えど、いろんな歌手がいて、それぞれに良さがあるのだからそれを楽しむことにしましょう。初めて聴くしね。代役は、ボローニャでフローレスとダブルで歌っていたアルベロです。

9月中旬だというのに真夏日の土曜日、それでも少しは秋の装いを・・が大きな間違いで汗だく。

舞台は青いライトに黒基調のダークな色彩でとてもシンプル。余計なものやTシャツや短パンで登場するようなものではありません。
こういうシンプルなセットにシンプルな演出は、言い換えれば純粋に歌手の歌声に耳も目も集中させられますから出演する歌手は大変だろうなと思います。
しかも超高音と言われる音が頻繁にでてきたりベルカントの超技巧が随所に・・・。雰囲気で歌うこともできると思いますが、これらを完璧にこなせる美声の歌手の歌を聴いたら本当に幸せな気持ちになります。
そういう意味でも針のむしろのような状態で登場するアルベロが少々気の毒に思うのですが、実力の世界ではこうしてスターの代役で注目をあびて一気にスターダムにのし上がるということは珍しいことではないので、踏ん張りどころです。

この日3階センター2列目で見たのですが、私にとってベスポジかも知れません。オケの音も歌手や合唱の声が本当にバランスよく聞こえてきます。ステージもオーケストラピットの中も何も遮るものはなく良く見えるし、舞台床を照らす美しい照明も楽しむことができます。距離があるので、歌手の表情まで見ることはできませんが、別にいいです。私はそこにこだわりはありませんので^^。

1幕始まってすぐに聞こえ方響き方のバランスがいいことにホッとしたのですが、肝心の音楽はなんというか独特なねっとり感と独特なニュアンスがあって興味がわきました。少々合唱のばらつきやオケと合わないような部分もありましたがすぐに修正されたような気がします。
まだ32歳??という若いマリオッティは、この演目をよく指揮していますし、DVDにもなっています。テンポといい音楽の作り方といい、詳しいことは私にはよくわかりませんがとても面白くこの先注目していきたいなと思いました。2012-13シーズンにはMETで清教徒を振るらしいのでぜひ聴いてみたい!

で、アルベロです。代役発表の時から「偉大なる自然さを持ってハイFを歌う」と総裁が言及してしまったテノールです。すごいプレッシャー・・。
アルトゥーロという役は始まって45分くらいたってからようやく登場し、登場した瞬間にいきなり超有名アリアからスタートします。
うん、なんとまろやかで優しい声なんだ・・。フローレスの芯があって孤高な感じのする声とも、パヴァロッティの太陽のような明るさ、色のある声とも違う(私はこのふたりの声が大好き)けれど、これがイタリア的というのか・・よくわからないけれど、本当に鋭さや硬さがまったくなく、どの音域も無理している様子もなく滑らか。
そのままいとも簡単にハイCの上Cのシャープ(Cis)まで歌ってしまうんだからびっくり。
というかあまりに楽々、本当に偉大なる自然に何事もなかったように歌うので、その凄さを聴き逃しそうになるほどでした。声量は少し足りないようで、オケがガツンとなったりアンサンブルに混じると声が埋もれてしまうこともありましたがそれでもその美しい響きはしっかり堪能しました。

私は時々視覚的に邪魔されることなく声を堪能したいときには目をつぶって聞いてみます。そうすると、声の美しさと歌に込める想いが強く伝わってきてそれだけで感動してしまうのですが、今日はそのまま意識がそのままどこかに行ってしまいそうな・・^^;、美しいのだけれどそれ以上でもそれ以下でもなく、歌からドラマを感じられなかったのです。まあベルカントオペラは、そもそもストーリー的にそれどうよ?とかなんじゃそりゃ?みたいな突っ込みどころ満載なものが多く、大真面目に入り込んで聴くものではないですが、それでも一応熱く愛を語る曲であったり、心情を吐露する曲なので、技巧を駆使したうえでその気持ちを感じたいと思うのですが、アルベロにはそれがない。目を開けてみても前述したとおり、視覚的にドラマを補う要素がない演出なので、棒立ちして歌うだけです。
これだから大変なのです。そもそも歌えなければ話にならないけれど、その歌から何も感じないのはいかん。テノールはソプラノを歌で愛してくれなくては!
相手役のランカトーレとのケミストリーもあまりなく、二人が愛し合っているようにはまるで見えないので、なんで狂乱していくのかが見えないという残念なことに。

最終3幕ではいよいよ彼に期待されている最大の聞かせどころ、ハイD連発にハイFまでチャレンジするという・・世にも貴重な時です。
1幕はじめの美しさが少しずつ乱れてきたかなと思いつつもなかなか聴かせてくれていたのですが、ハイD直前のワンフレーズで明らかに全身に力がはいり緊張したのがわかりました。そしてきちんと出るには出たけれど、それまでの美声とは打って変わってざらついたDに思わず耳をふさぎたくなりました。心が痛い・・。
そしてハイライト、ハイF・・・、同じくその曲が始まったとたんに緊張したのがわかり、直前にノドが絞められたような硬さを感じ、大丈夫かな?と心配したとおり・・・・。
Fまで上がり切らずなんとも中途半端で美しくない響きなE→Fとヨッコラショと持ち上げ歌唱。うわ~~ん(泣)。
客席はヤンヤヤンヤの大喝采でしたが、そんなに無理しなくても・・・今後喉を潰さないかいらん心配をしてしまいました。
そりゃ~そうそう聴くことのない男性のハイF(しかもファルセットじゃない)を不完全でも聴けるというのは奇跡のようなひと時だし、高音というのはスリリングでオペラ鑑賞の楽しみの一つでもありますが、せっかくここまでとても美しく歌ってきたのに、、と私はとてももったいなく思いました。
きっと、自分に期待されているのはここだ!というものすごいプレッシャーと責任感があったのでしょう。それを考えるとその気持ちに心から拍手を送りました。しかしこのあとまだ舞台は終わっていないのに、ランカトーレが「よかったわよ~」といったかどうかわかりませんが、そう見える動作でアルベロの背中をポンポンとたたき、手を握り笑顔でたたえる。これにもものすごい違和感。ほのぼのしている、といえばそうなんですが、まだ作品が終わっていないのに仲間うちでたたえ合われてもなぁ。。。集中してみたいのに気持ちが途切れる感じでひとり取り残された気がしました。

一方、エルヴィーラのランカトーレ。私は元々彼女にはあまりポジティブな印象がないので、今回もそれを覆すことはなかったのですが、個人的な過去の印象はさておき調子が悪かったんじゃないでしょうか。1幕ではもう不安定だわ甘いわヘロヘロだわ、、あげくに発声の問題か音域ごとに音色が違いその切り替えがうまくない。特に中音域以下になると必ずカエルを踏んだような声が聞こえてくるので、どんなに素晴らしい高音やコロラトゥーラを聴かせてくれてもそこで集中が途切れてしまいます。1幕ではBravoとBooの両方が聴こえました(最後はBravoの大サービスでしたが)。そして写真で見るとキュートな美人ですが、動きの端々に品のなさがでてしまうのもとても残念。座った姿勢から立ち上がる時に片膝を立てるのですが、その時の立て方が・・100年の恋も冷める 笑、裏番のような動きになってしまい、ああ、、、と残念に。この演出の中では唯一よく動いていた方なので余計に気になったのかもしれません。
それにこの話、結婚するはずだった人に捨てられたと思いこんで狂乱するのですが、帰ってきた途端にケロっと元気になります 笑。そういう対比はまるで感じない。
感じないけれど、狂乱の場の集中力とコロコロと転がす高音の美しさは素晴らしかったです。
会場中大喝采でしたから、これは私の感性に合わなかったのだと思います。
総じて中途半端な印象でした。

もう一人ガザーレの代役だったリッカルドのサルシも1幕はハラハラしました。なんなんだ、、この芯のない歌い方は・・。リッカルド(バリトン)とジョルジョ(バス)が安定しないと作品が薄くなってしまうのに・・と心配したのですがジョルジョ役のウリヴィエーリが良かったのでヨシとします(えらそーに)

この日開演前にフランチェスコ・エルナーニ総裁(かっこいい名前♪)が、大幅な変更が遺憾である、市長や大統領からもよろしく、?代役もいい人を揃えた、直前になくなったリチートラと地震と津波の犠牲者にこの公演を捧げる(この来日公演の別作品「エルナーニ」の主役テノールだったリチートラが9月5日に交通事故で急逝)と挨拶。このときに通訳が心もとなく、、、なんとなかならんのか・・。そして執拗なブーを出す一人の男性。気持ちはわかるけれど相手が違うぞよ。

そんなこんなで一番楽しみにしていた来日公演は大波乱だったわけですが、それでもこんな日本にはるばる来てくれたみなさんには心からの感謝と、また来てね!とお願い。
そしてブツクサ言うのもまた生舞台の醍醐味ということで 笑、だって聴かなければわからないもの。
さらに言えば、体が震えるような、後世に残るような名演になんて生涯のうち1回か2回出会えれば恩の時で、どれほどキャストがそろっても有名歌手そろい踏みでも大感激するなんて保証はないのです。

だから生は楽しいし、その期待を込めて行ってしまうのでした♪

リハーサルの映像。ここで聴こえてくる声と会場ではずいぶん印象が違います・・。

■ボローニャ歌劇場来日公演「清教徒」
指揮:ミケーレ・マリオッティ
演出:ジョヴァンナ・マレスタ
出演者:エルヴィーラ:デジレ・ランカトーレ
アルトゥーロ:セルソ・アルベロ
リッカルド:ルカ・サルシ
ジョルジョ:ニコラ・ウリヴィエーリ
エンリケッタ:ジョゼッピーナ・ブリデッリ
ブルーノ:ガルリエーレ・マンジョーネ
ヴァルトン:森雅史

■2011年9月17日(土)15:00開演~18:45頃終演
 1幕:15:00-16:30(休憩20分)
 2幕:16:50-17:40(休憩20分)
 3幕:18:00-18:45
■東京文化会館
■3F-C2列
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コメント

お疲れさまでしたー
フローレス目当てに取っちゃったから、代役でもいい所を見つけよう!とポジティブに挑みましたが、やはり…って感じでしたね。
ネットでの評価が概ね好意的だったのは「そうでもなきゃやってらんない!」的な感情もあったと思うのですよ。。
アルベロはリサイタルで聴いたらすごく好きになるだとうなーと思う声質でした。
オペラって声、芝居、ルックスと条件が揃わないとなぁ、とつくづく思った公演でした。
さ、次!(笑)

さちえ #1olHiW.o | URL
2011/09/19 22:23 | edit

まー総裁の言うとおりなら、もっとブレイクしまくってるかな?<アルベロ。
彼の公式HPでは凄く嬉しそうに誇らしげにフローレスの代役をすることに言及していて、それが微笑ましかったです。これからどんどん頑張ってくれたら嬉しいな。

ランカトーレのアヒル声は最初聞えてきたときは、ミスったのかな?と思ったくらいでした。が、ずっとそのままだったので逆に不安になったくらいで(私の耳が変なのか?こういう歌い方もあるのか?と)。

そんなこんなもまたお会いしたときにゆっくりお話できたらええなあ~。
てことで、さ、次!と私も言ってしまおうww

aya #fdGsTRjY | URL
2011/09/20 17:53 | edit

さちえさん

お疲れ様でした~。
歌手目当てで、というのは切り替えが難しいね、やっぱり。
話自体に深みがあるとか面白いものは、代役でもそれなりに入り込めるのだけど、そうじゃないと余計に雑念が・・(笑)。ま、でもこういうものかな~とも思ったりします。いつもいつも大感激するわけじゃないっていう意味でね。

今年はまだ続きがありますからね、こちらも男どもは「お大事に(棒)」みたいな状態だけど、それはそれとして楽しみましょうね。

nanamayu #- | URL
2011/09/21 12:21 | edit

ayaさん

> まー総裁の言うとおりなら、もっとブレイクしまくってるかな?
確かに(笑)。
好みはいろいろなので頑張ってほしいよね~。

私も自分の耳や感性を疑うことはあるけど、でも感じちゃったことを変えることはできないからしょうがないとあきらめてますよ。

> そんなこんなもまたお会いしたときにゆっくりお話できたらええなあ~。
ええ、それはもう是非!!!

nanamayu #- | URL
2011/09/21 13:05 | edit

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